なぜ年収は「努力」ではなく「業界」で決まるのか?35歳で知った構造的な格差の正体。
「今の会社で人一倍頑張れば、いつか報われるはずだ」
「資格を取って、スキルを磨けば、会社は正当に評価してくれる」
35歳までの僕は、本気でそう信じていました。
毎日誰よりも早く出社し、深夜まで残業し、上司の無茶な要求にも応えてきた。TOEICも800点を取り、業務に関連する資格も一通り揃えた。
しかし、現実はどうだったか。
昇給は年に数千円。同期と比べれば数万円高いかもしれないけれど、生活が劇的に変わるほどではない。一方で、SNSやニュースで目にする「IT業界の同年代」は、僕よりも遥かに短い労働時間で、1.5倍、2.3倍の年収を稼いでいる。
「自分の努力が足りないのか?」
そう自問自答しては、さらに自分を追い込む……。そんな負のループに陥っていました。
でも、IT業界に転職してようやく気づいたんです。
年収を決める最大の要因は「個人の努力」ではなく「どの業界(市場)に身を置くか」という構造的な問題である、という残酷な事実に。
今回は、僕が35歳で直面し、価値観を根本から覆された「業界格差の正体」を論理的に解き明かしていきます。
目次
- 「頑張れば報われる」という思考停止が、あなたの首を絞める
- 【図解】利益率と労働生産性。メーカーとITの決定的な差
- 残酷な真実:「衰退業界の課長」より「成長業界の平社員」が高い理由
- なぜ35歳が「業界の乗り換え」ができる最後のチャンスなのか
- まとめ:まずは「市場」というモノサシで自分を測り直そう
1. 「頑張れば報われる」という思考停止が、あなたの首を絞める
多くの日本人は「真面目に働けば報われる」という教育を受けて育ちます。
確かにそれは美徳ですが、ビジネスの世界、特に「給与」という側面においては、この考え方は非常に危険な「思考停止」を招きます。
努力は「掛け算」である
年収の決定式をあえて定義するなら、こうなります。
$$年収 = (業界の利益構造 \times 職種の希少性) + 個人の努力$$
残念ながら、個人の努力は最後に来る「加点要素」に過ぎません。ベースとなる「業界の利益構造」が低ければ、どんなに努力を積み増しても、得られる結果(年収)には限界があるのです。
僕は前職のメーカー時代、1円単位のコスト削減に血眼になっていました。1億円のプロジェクトを動かしても、最終的な利益は数百万。その中から社員に還元される額なんて、微々たるものです。
一方で、現在のIT業界(SaaS企業)では、一度開発したプロダクトを多くのお客さんに売るほど、利益率は二次関数的に上がっていきます。「原価」という概念が物理製品とは根本的に異なるのです。
2. 【図解】利益率と労働生産性。メーカーとITの決定的な差
なぜIT業界は高い給料を払えるのか。それは「儲かっているから」という単純な理由だけではなく、「一人あたりの労働生産性」が圧倒的に高いからです。
以下のデータを見てください。これは僕が転職前に徹底的に調べた、業界ごとの平均的な指標です。
産業構造の比較
| 項目 | 大手製造業(メーカー) | IT・情報通信 |
| 営業利益率 | 3% 〜 8% | 15% 〜 40% |
| 一人あたり売上 | 高い(設備投資が必要) | 非常に高い(人的資本が中心) |
| 固定費 | 工場、在庫、物流コスト甚大 | サーバー代、人件費が中心 |
| スケーラビリティ | 低い(増産に時間と金がかかる) | 極めて高い(ボタン一つで世界へ) |
メーカーの場合、売上を2倍にするには、工場を増設し、人を雇い、原材料を2倍仕入れる必要があります。しかし、ITサービスは、ユーザーが100人から10,000人に増えても、コストはそれほど増えません。
この**「限界費用がゼロに近い」**という特性こそが、IT業界が社員に高年収を提示できる原資(お金の源泉)になっているのです。
「僕がメーカーで必死に頭を下げていた1時間は、IT業界ではシステムによって自動化されている1秒に負けているのかもしれない」
そう気づいたとき、僕は自分の努力の方向性が間違っていたことを痛感しました。
3. 残酷な真実:「衰退業界の課長」より「成長業界の平社員」が高い理由
これは僕の知人のケースですが、非常に象徴的な話があります。
- Aさん(45歳): 老舗アパレルメーカーの課長。年収750万円。部下を10人抱え、連日のように店舗の売上不振に悩み、休日返上でイベント対応。
- Bさん(28歳): 外資系SaaS企業のカスタマーサクセス(平社員)。年収850万円。フルリモートで、効率的に顧客をサポート。
45歳の課長であるAさんの方が、間違いなく経験もスキルも、そして責任も重いでしょう。しかし、現実の給与は20代のBさんの方が高い。
なぜか?
それは、**「Bさんがいる場所の蛇口から出る水の量(キャッシュフロー)が、Aさんの場所より圧倒的に多いから」**です。
「場所」を変えるだけで年収は上がる
僕は転職した際、職種自体は「営業」から「カスタマーサクセス」へと少しスライドしましたが、やっていることの根本(顧客の課題解決)は変わりませんでした。
しかし、業界を「メーカー」から「IT」に変えただけで、基本給が一気に10万円上がり、ボーナスの算定基準も跳ね上がりました。
個人の能力が1年で1.5倍に伸びたわけではありません。ただ「高く評価される場所」に移動しただけなのです。これが「市場を変える」ことの破壊力です。
4. なぜ35歳が「業界の乗り換え」ができる最後のチャンスなのか
「でも、もう35歳だし、今さら新しい業界なんて……」
そう思うかもしれません。しかし、現実は逆です。35歳こそが、異業界へ越境できるラストチャンスなのです。
35歳に求められるのは「専門スキル」+「ポータブルスキル」
IT業界は今、深刻な人材不足に陥っています。エンジニアだけでなく、実は「現場感覚を持ったビジネス職」が圧倒的に足りていないのです。
- メーカーで培った「緻密な工程管理能力」
- 泥臭い現場で鍛えられた「交渉力」
- 組織を動かす「調整能力」
これらはIT業界の若いベンチャー企業にとって、喉から手が出るほど欲しい**「ポータブルスキル(持ち運び可能なスキル)」**です。
40代を過ぎて管理職としての色が濃くなりすぎると、他業界への適応は難しくなります。しかし、35歳であれば「これまでの経験」を武器にしつつ、新しい業界の「ルール」を吸収する柔軟性がまだ残っていると評価されます。
僕も転職活動中、最初は「IT未経験」という点に引け目を感じていました。しかし、面接官に言われたのはこうでした。
「ITの知識は入ってから学べます。それよりも、あなたがメーカーで経験してきた『大規模なプロジェクトを完遂させる力』が欲しいんです」
5. まとめ:まずは「市場」というモノサシで自分を測り直そう
今の会社で一生懸命働くことは素晴らしいことです。
しかし、その努力が「報われない構造」の上にあるとしたら、それはあまりにも悲しい。
35歳。残りの会社員人生は、まだ30年近くあります。
その時間を、じりじりと縮小していく市場で「耐える」ことに使うのか。それとも、成長し続ける市場で「レバレッジ」を効かせることに使うのか。
その決断を先延ばしにするほど、選択肢は減っていきます。
あなたが今、やるべきこと
まずは「自分が別の業界に行ったら、いくらで売れるのか?」を客観的に知ること。これに尽きます。
僕が使ったのは、ビズリーチやリクルートダイレクトスカウトといった、いわゆるハイクラス向けの転職サービスです。
これらに登録して、レジュメ(職務経歴書)を埋めてみてください。
「IT業界のヘッドハンター」から声がかかるか、その時提示される「年収のレンジ」はいくらか。それを見るだけで、自分の本当の立ち位置がわかります。
「今の会社に居続けるのが、実は一番のリスクだった」
そう気づけた人から、人生は変わり始めます。
まずは一歩、外の世界を覗いてみませんか?
次回予告:「35歳未経験では無理」という定説を覆す、IT業界が求める「おじさんの作法」の価値をお伝えします。


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